太陽光発電システムは固定価格買取制度(FIT制度)により、設置してから10年間の売電価格は変わりません。しかし、10年が経過すると卒FITとなるため、発電した電力は売電よりも自家消費したほうがお得になる可能性があります。
そのため、卒FITしたら、自家消費に適した住宅機器への買い替えを検討してみましょう。
そこで今回は、卒FITを迎えたときの給湯器について解説します。卒FITを迎えそうな方や、給湯器の寿命が近い方は参考にしてください。
太陽光発電システムとは?
太陽光発電システムとは、光エネルギーを電力に変換する住宅機器です。発電した電力は自家消費したり、電力会社に売電したりして収入を得ることができます。
政府は売電価格を10年間維持するFIT制度(固定価格買取制度)を実施しており、住宅用太陽光発電の2023年度と2024年度の買電価格は1kWhあたり16円です。
FIT制度の売電価格は太陽光発電システムを導入しやすくするために設定されています。
蓄電容量やメーカー、機種によって異なりますが、太陽光発電システムを導入した節電効果とFIT制度の売電収益により、太陽光発電システムを導入した際のコストを10年間で最小限に抑えることができます。
一方で、FIT制度が終了する卒FIT後の売電価格は電力会社が自由に決めており、2023年時点では1kWhあたり9円前後が相場です。そのため、卒FIT後は発電した電力を売電するよりも、自家消費したほうが節約効果を期待できる可能性が高いです。
電力の自家消費の割合を高めるための方法
電力の自家消費の割合を高めるためには、電気で動く住宅機器を増やしてみましょう。
例えば、家庭用蓄電池を設置すれば、自家消費しきれなかった余剰電力を蓄えておくことができ、太陽光発電システムが発電できない時間帯に住宅に給電ができます。電力会社から購入する買電量を減らすことができるので、電気代の節約が行えます。
また、エコキュートやIHクッキングヒーター、EV(電気自動車)、ドラム式洗濯乾燥機、エアコンなど電力を消費する電化製品の購入も検討してみましょう。
特におすすめなのが、エコキュートです。
エコキュートとは?
エコキュートとは、電気と空気の熱を利用してお湯を沸かす貯湯式給湯器です。エアコンにも使用されているヒートポンプユニットで空気を圧縮し、生み出した高熱でお湯を沸かしておき、貯湯タンクユニットで蓄えて必要に応じて各所に給湯します。
電気で動く給湯器ではありますが、電気温水器と違ってお湯を沸かすためのエネルギーは「空気の熱」です。そのため、電気温水器やガス給湯器に比べて、お湯を沸かすためのランニングコストが抑えられています。
次の表は、同じ湯量を沸かす場合の年間ランニングコストを比較したものです。
エコキュート | 電気温水器 | 石油給湯機 | ガス給湯器 | |
---|---|---|---|---|
北海道電力エリア | 約32,400円 | 約108,000円 | 約78,000円 | 約114,000円 |
東北電力エリア | 約31,200円 | 約80,400円 | 約70,800円 | 約10,800円 |
北陸電力エリア | 約42,000円 | 約166,800円 | 約69,600円 | 約121,200円 |
東京電力エナジーパートナーエリア | 約25,200円 | 約104,400円 | 約81,600円 | 約81,600円 |
中部電力エリア | 約25,200円 | 約100,800円 | 約67,200円 | 約90,000円 |
関西電力エリア | 約20,400円 | 約86,400円 | 約63,600円 | 約84,000円 |
中国電力エリア | 約43,200円 | 約91,200円 | 約67,200円 | 約116,400円 |
四国電力エリア | 約26,400円 | 約126,000円 | 約66,000円 | 約102,000円 |
九州電力エリア | 約20,400円 | 約78,000円 | 約64,800円 | 約110,400円 |
沖縄電力エリア | 約28,800円 | 不明 | 約55,200円 | 約63,600円 |
実際のランニングコストは給湯器の性能や家族の人数などによって異なりますが、エコキュートに買い替えることで節約効果を期待できます。
エコキュートは太陽光発電システムとの相性が良い
2023年6月1日より、大手電力会社7社が電気料金単価を値上げしています。エコキュートは季節別時間帯電灯という料金プランの、電気料金単価が安い時間帯にお湯を沸かしていましたが、契約している電力会社によっては値上げの影響を受けます。
しかし、太陽光発電システムがあれば、エコキュートでお湯を沸かすために必要なエネルギーを自宅で発電することも可能になるので、電気料金単価が値上げする影響を最小限に抑えられます。
つまり、エコキュートはほかの給湯器に比べてランニングコストが少なく、太陽光発電システムとの相性が良い住宅機器です。そのため、卒FIT後を見据えて住宅機器を買い替えるなら、エコキュートをおすすめします。
太陽光発電システムと相性の良いエコキュート
エコキュートは様々なメーカーから販売されており、機種によっては次のような機能を搭載しています。
機能名 | 概要 | 搭載している主な機種 | |
---|---|---|---|
ダイキン | 昼間シフト機能 | 夜間の沸き上げ量をセーブして、翌日の昼間に沸き上げる機能 | 2022年モデル、2023年モデル全機種に対応 |
パナソニック | ソーラーチャージ | 夜間の沸き上げ量を減らして、翌日の昼間に分散する機能 | JP、J、N、C、W、S、NS、H、FP、F、Lシリーズなど |
三菱 | お天気リンクAI お天気リンクEZ |
天気予報をもとに、昼間の余剰電力を有効活用する機能 | Pシリーズ、Sシリーズ、EXシリーズ、Aシリーズ |
日立 | 太陽光発電利用沸き上げ | 太陽光発電の余剰電力を利用してお湯を沸かす機能 | [水道直圧給湯]フルオート標準タンクなど |
コロナ | ソーラーモード ソーラーモードプラス |
夜間の沸き上げ量を調整して昼間の太陽光発電で沸き上げる機能 | 2019年以降に販売されたモデル |
東芝 | 昼の運転予約 | 設定した時間帯にお湯を沸かせる機能 | フルオートタイプなど |
上記の機能を搭載しているおすすめエコキュートを順番に解説します。
ダイキンのおすすめエコキュート
ダイキンの「昼間シフト機能」とは、昼間の沸き上げ時刻までに必要な湯量を夜間に沸かし、残りは翌日の昼間に太陽光発電システムの余剰電力で沸かす機能です。余剰電力を効率よく活用できます。
2022年モデル以降のダイキンエコキュートなら、全機種に搭載されている機能です。おすすめのエコキュートは「EQN37XFV」になります。
「EQN37XFV」はフルオートタイプのダイキンエコキュートで、温浴タイムやウルトラファインバブル(別売)などの代表的な機能に対応しています。ただし、水圧は210kPaなので、ガス給湯器に比べると弱いと感じる場合があります。
パナソニックのおすすめエコキュート
パナソニックの「ソーラーチャージ」は夜間の沸き上げ量を減らして、翌日の昼間に分散する機能です。太陽光発電のメーカーは問わないので、パナソニック以外の太陽光発電システムでも利用できます。
パナソニックはエコキュートのシリーズが豊富ですが、大半のシリーズに「ソーラーチャージ」が搭載されています。おすすめのエコキュートは「HE-NS37LQS」です。
「HE-NS37LQS」はパナソニックエコキュートのスタンダードモデルですが、AIエコナビや配管洗浄、キレイキープコートなどの便利な機能を搭載しています。また、年間給湯保温効率が3.3と他メーカーのスタンダードモデルに比べて高い数値です。
三菱のおすすめエコキュート
三菱の「お天気リンクAI」や「お天気リンクEZ 」は、天気予報を基にAIが分析を行って、太陽光発電システムの余剰電力を有効活用する機能です。AIが自動的に判断して沸き上げ量をコントロールするので、ご自身で設定する必要はありません。
「お天気リンクAI」は三菱HEMSが必須ですが、「お天気リンクEZ 」は不要です。2018年度以降に販売されたモデルは「お天気リンクEZ」を搭載しています。
おすすめのエコキュートは「SRT-W376」です。三菱エコキュートのスタンダードモデルですが、追い焚き機能を搭載したフルオートタイプになります。年間給湯保温効率が3.3と高く、価格が抑えられている傾向があるので、コストパフォーマンスに優れています。
日立のおすすめエコキュート
日立の「太陽光発電利用沸き上げ」はHEMSを導入していなくても、リモコン操作で昼間にお湯を沸かせることができる機能です。季節や発電量に合わせて設定を変更でき、天気予報が外れた場合でも対処できます。
「太陽光発電利用沸き上げ」は2019年以降に販売された日立エコキュートならすべてのモデルに搭載されている機能です。おすすめのエコキュートは「BHP-F37WU」になります。
「BHP-F37WU」はフルオートタイプの標準タンクのため、日立の水道直圧式エコキュートとは違います。しかし、断熱性が高くてお湯が冷めにくいウレタンクを採用しているので、保温性能に優れている機種です。
コロナのおすすめエコキュート
コロナの「ソーラーモード」や「ソーラーモードプラス」は天気予報や季節に応じて昼間に沸き上げ運転を効率よく行う機能です。「ソーラーモードプラス」では、電力消費パターンから余剰電力を計測するので、「ソーラーモード」よりも効率がアップしています。
「ソーラーモード」と「ソーラーモードプラス」は2019年以降に販売されたモデルならどちらかが搭載されています。おすすめのエコキュートは「CHP-HXE46AY5」になります。
「CHP-HXE46AY5」は「ソーラーモードプラス」が搭載されており、年間給湯保温効率が4.0を達成したプレミアムエコキュートです。価格は高いですが、省エネ性能に優れ、290kPaの高圧力パワフル給湯を利用できるなど、高性能なエコキュートになります。
東芝のおすすめエコキュート
東芝の「昼の運転予約」は、太陽光発電の余剰電力が発生する時間に合わせて沸き上げ開始時間を設定できる機能です。リモコンから設定できるので、機械操作に不慣れな方でも安心して行えます。
「昼の運転予約」は2019年以降に販売されたすべてのモデルに搭載されている機能です。おすすめのエコキュートは「HWH-B376-R」になります。
「HWH-B376-R」は日立のスタンダードモデルのエコキュートで、銀イオンの湯のような快適な機能は搭載されていません。しかし、コストパフォーマンスに優れているので、フルオートタイプのエコキュートをお得に購入したい方におすすめです。
おひさまエコキュートとは?
おひさまエコキュートとは、太陽光発電システムとの連携が前提で設置できるエコキュートです。一般的なエコキュートは夜間にお湯を沸かしますが、おひさまエコキュートは日中の余剰電力を使用してお湯を沸かします。
一般的なエコキュートよりも、更にランニングコストを抑えることが可能ですが、記事執筆時点では東京電力の料金プラン「くらし上手」でしか契約できず、次のエリアに住んでいる方が対象となります。
- 栃木県
- 群馬県
- 茨城県
- 埼玉県
- 千葉県
- 東京都(島嶼地域を除く)
- 神奈川県
- 山梨県
- 静岡県(富士川以東)
太陽光発電システムを設置しており、上記のエリアに住んでいる方はおひさまエコキュートも選択肢に入れて検討してみましょう。
太陽光発電システムとエコキュートを連携する際の注意点
太陽光発電システムとエコキュートを連携する際は、次のことに注意しましょう。
- 非対応の機種がある
- 天気や発電量によっては割高になる
エコキュートが古い機種だと、上記で説明した太陽光発電システムと連携できる機能が搭載されていない可能性があります。
機能が搭載されていなくても、沸き上げ時間を手動で操作すれば、日中にお湯を沸かすことはできます。
しかし、毎日の天気予報と余剰電力の発電量を見比べながら操作するのは面倒なので、なるべく太陽光発電システムと連携できる機能を搭載したエコキュートを選びましょう。
また、天気や発電量によっては、余剰電力だけでお湯を沸かせない日があります。余剰電力が足りない場合は日中に電力会社から不足分の電力を買電するため、結果としてランニングコストが割高になる可能性があるので注意しましょう。
まとめ
以上が、卒FITを迎えたときの給湯器の解説です。
卒FIT後は売電価格が大幅に下落するので、自家消費の割合を高めると電気代の節約につながります。FIT期間は10年あり、10年は一般的な給湯器の寿命なので、自家消費の割合を高めるためにもエコキュートへの買い替えをおすすめします。
「エコのたつじん」では、メーカー正規品を低価格で販売しております。今回紹介したおすすめエコキュートだけでなく、様々な機種も取り扱っているので、卒FIT後を見据えてエコキュートに買い替えたい方は、ぜひご相談ください。